注文住宅の耐震等級はいくつにするべきなのか

注文住宅の耐震等級はいくつにするべきなのか

地震大国である日本には、判明している活断層だけでも2,000か所以上もあり、毎月400回以上ものマグニチュード3以上の地震が発生しています。
各地では、いつ大きな地震が来てもおかしくないと言われているのです。
注文住宅を建てる方にとって、地震が来ても倒壊しない安全な住宅を建てられるどうかというは非常に気になるところです。
耐震は、いつかは来るであろう大地震への備えであり、この地震の多い日本で注文住宅を建てる際には必須の知識です。
この記事では、耐震性を判断する耐震基準や、耐震性を判断する耐震等級についてご紹介していきます。

そもそも「耐震」とは?

ここ数十年の間に、日本では大規模な地震が数回にわたって起こり、住宅も大きな被害を受けました。
調査によれば、それぞれの地震で住宅が倒壊したのは、少ない耐久壁、そして土台からの柱抜けが原因でした。
柱抜けを引き起こす要因となったのは、柱や梁・筋交いなどで構成される耐久壁が少なく、配置のバランスが悪いことでした。
縦揺れの地震が起こると、柱は土台から抜けて簡単に倒壊してしまいます。
こうした被害状況をもとに、建築基準法が改定され、特に壁量のバランス、壁の補強について義務化されています。

耐震とは、「地震に耐える性能」のことです。
したがって、耐震性能は地震に耐える性能、耐震等級は地震に耐えるための等級ということになります。
「耐震」以外に「制振(静振)」「免震」という言葉がありますので、違いに注意しましょう。

耐震構造

建物自体を強く頑丈につくり、地震の揺れを受け止めて耐える構造です。住宅全体の99%がこの耐震構造です。地震の際は建物は大きく揺れ、中にいる人も激しい揺れを感じます。

制振(静振)構造

地震の揺れに連動して建物が逆方向に揺れると、家の中の揺れは少なくなります。制震構造では、建物の壁や柱などにダンパーと呼ばれる制振装置を組み込み、揺れを吸収して地震の力を20~30%ダウンさせます。建物のひび割れなどを少なくさせ、倒壊対策としては一定の効果があります。
ただし、1階は地震のままに揺れてしまいますので、制震の効果があるのは2階以上の階になります。

免震構造

建物の基礎にゴムなどの免震装置を設置し、地震に対して逆方向に建物を保持することで、地震の揺れを建物に直接伝えにくくするものです。地震の揺れ幅が軽減されるため、長くゆっくりと揺れることで、建物が損傷したり家具が倒れたりしにくくなります。建築コストは3%ほどアップしますが、地震の力は40%~60%軽減されると言われています。
最近はマンションで採用されることが多く、免震装置は隣家との十分な距離がないと設置できないので、狭小地では設置できないこともあります。

耐震の基準とは

住宅の耐震性能の歴史は、大地震の履歴ともいえます。
建築物が地震による振動に耐えられるかどうかを定める耐震基準がはじめて施行されたのは、関東大震災の翌年1924年のことです。
その後、大地震が発生するごとに、多くの方々の命と生活が犠牲になり、それを受けて耐震基準は改正されてきました。
現行の一つ前の旧耐震基準では、ある程度の大きさの地震が来ても建物が倒壊せず、地震による被害が軽くすむことを目標とするにとどまっていました。
しかし、昭和56年6月1日に導入された現行の耐震基準では、建築物を新築するときには、具体的に「震度6強の地震に耐えられる性能」をもたせることが義務づけられています。
建物が倒壊しないことに加えて、「建物の中や周辺にいる人に被害が及ばないこと」が目標となっています。
この「昭和56年6月1日」以前に建築された建物は、基準が満たされていない場合があります。

耐震等級とは

耐震等級とは、建物の強度を表す1つの指標で、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に定められている、施主に判りやすい耐震性の判断基準です。

住宅の所有者にとっては、どんなに大きな力の影響を受けても傷一つない建物というのが理想でしょう。しかし、例えば、極めて稀に発生する地震に対して全く傷を受けない建物を作ろうとすると、現在の技術では非常に難しく、仮にできたとしても莫大な費用を要するものとなるなど、どうしても無理が生じてしまいます。
そこで、十年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では1度は遭遇する可能性が高い)大きさの力に対しては、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じないことを一つの目標(これを「損傷防止」と呼びます。)とし、数百年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では遭遇する可能性は低い)大きさの力に対しては、損傷は受けても、人命が損なわれるような壊れ方をしないことをもう一つの目標(これを「倒壊等防止」と呼びます。)としました。

数百年に一度程度発生する地震による力の1.5倍の力に対して、倒壊、崩壊等しない程度を想定しています。
耐震等級は、耐震等級1~3に分けられていて、耐震等級3が最高等級となっています。

耐震等級1:建築基準法で定めたのと同程度の建物

  • 数百年に一度程度の地震(震度6強から7程度)に対しても倒壊や崩壊しない
  • 数十年に一度発生する地震(震度5程度)は住宅が損傷しない

建築基準法で定められた最低限の耐震性能で、これ以下は危険というギリギリの耐震性能です。
震度6~7程度の地震では、即倒壊はしなくても、大規模修繕や建て替えとなる可能性があります。

耐震等級2

  • 等級1で想定される1.25倍の地震が起きても耐えられる

構造計算ないし精密診断が必要になります。
震度6強~7の地震でも、一定の補修程度で住み続けられるレベルで、学校や病院などでは耐震性能が等級2になっています。
耐震等級2以上は「長期優良住宅」として認められます。

耐震等級3

  • 等級1で想定される1.5倍の地震が起きても耐えられる

こちらももちろん構造計算ないし精密診断が必要です。
震度6強~7の地震でも、軽い補修程度で住み続けられるレベルで、消防署や警察署などの防災拠点は等級3になっています。
「長期優良住宅」として認められます。

等級の差はどこで表れるか

耐震等級を高めるためには、次のような方法があります。

  • 壁を強化する
  • 床と屋根を強化
  • 柱と梁の接合部を強化
  • 基礎を強化
  • 梁の強化

耐震等級1の耐震性ではダメなの?

等級の違いを理解するためには、「損傷」「倒壊等」という2つに注意してください。
「損傷」を防止するということとは、10年に1回は起こりうる地震に対して、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じない耐震性があるということす。
これに対して、「倒壊等」を防止するということは、100年に1回は起こりうる地震に対して、損傷は受けても、人命が損なわれるような壊れ方をしない耐震性があるということになります。
つまり、耐震等級1の建物は、10年に一度の地震(震度5)ではほとんど壊れませんが、100年に一度の地震(震度6強~7)では、柱や梁、壁などが大破し、建て直さなければいけない可能性があります。
阪神大震災や熊本地震のような地震では、建て替えや大規模修繕が必要となります。

耐震等級2以上を取得するメリット

耐震等級2以上の家のメリットは、何よりも、より地震に耐えられるという安心感でしょう。
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍も「強い家」になります。
耐震等級1では、震度7程度の地震で損傷する恐れがありますが、耐震等級2以上では損傷の可能性も低くなります。
耐震等級2以上は「長期優良住宅」として認められる条件のひとつです。
長期優良住宅とは、2008年にできた長期優良住宅法に基づき、「丈夫で長持ちし、快適に暮らせる住まい」として行政が認定するものです。
その基準のひとつが、耐震等級2相当以上の強度となっているのです。
長期優良住宅として認定されると、住宅ローン控除の控除額が増え、買うときや住んでいるときの税金が優遇されるほか、ローン金利が最長50年間固定されるフラット50が使えます。
また、耐震等級2以上は、地震保険が割引きされるということもメリットのひとつです。
住宅ローン減税の最大控除額が大きくなり、「耐震等級割引」なども適用されます。
耐震等級2では保険料の割引率は30%、耐震等級3では半額にもなります。
東日本大震災などで、耐震等級3の住宅が被害を受ける可能性が低かったことによって、割引率が増加しているようです。
いわゆる東南海地震や首都直下地震など、大地震の発生が懸念されている地域では、地震保険は割高ですから、保険料の割引きは大きなメリットであると言えます。

まとめ 耐震等級は家を建てる人が決める

耐震等級は、注文住宅を建てる人に耐震性を示すためのものです。
自分がこれから建てる家の耐震等級を最終的に決めるのは、お施主様自身です。
家を建てる工務店には標準の耐震等級がありますが、打ち合わせの段階から耐震等級をどうしたいかということは相談しておきましょう。
そのためには、耐震等級について正しい知識をもち、ある程度の判断できるようになることが必要です。
専門家として工務店に率直に相談し、最終的には施主であるあなたの希望を伝えることを心がけましょう。