あなたの家は地震に耐えられる?安くできる耐震性診断を紹介します

あなたの家は地震に耐えられる?安くできる耐震性診断を紹介します

阪神淡路大震災で10万棟の住宅が倒壊した原因と、その悲劇を生まないための教訓」という記事にも書きましたが、阪神・淡路大震災では、6,434人もの尊い命が犠牲になり、その死因の9割近くが住宅の倒壊による圧死などでした。
住宅の耐震性を高め、住宅の倒壊を防ぐことは、大きな人的被害を防ぐためにとても大切なことです。
日本では、国や自治体などによる安価な費用での耐震診断制度が多くあります。
耐震診断とは、建物が地震の揺れにより倒壊するかしないかを見きわめるための調査です。
今回は、木造住宅の耐震診断として広く利用されている、「木造住宅の耐震診断と補強方法」(財団法人日本建築防災協会)にもとづき、「誰でもできるわが家の耐震診断」「一般診断法」「精密診断法」という3つの診断についてご紹介します。

誰でもできるわが家の耐震診断

誰でもできるわが家の耐震診断」は財団法人 日本建築防災協会のホームページでダウンロードできます。
耐震に関する知識を学びながら、自宅の耐震性能を調べることができる診断シートです。耐
震性の向上させるための耐震改修を検討するのであれば、一度この診断チェックを行うことをお勧めします。
自分が住んでいる家が地震に遭った際に、どの程度強く、どこが弱いポイントかということを知ることができます。

具体的には10問のチェック項目がありますが、ここでは、それぞれの項目のポイントを紹介していきます。

自宅を建てたのは何年だったか

1981年6月に建築基準法が改正され、耐震基準が強化されました。1995年に起こった阪神淡路大震災において、1981円以降建てられた建物の被害がすくなかったことが報告されています。自宅を建てたのが、上記の時期よりも前か後かということは重要なポイントです。

大きな災害に遭ったことがあるかどうか

長年住んできた住宅であれば、その間に、床下・床上浸水や、火災、車の突入事故・大地震・画家上隣地の崩落といった災害に遭遇しているかどうかということはひとつのポイントになります。もし、そういった災害に遭って、わずかな修復しか行っていなかったとすると、外見ではわからないダメージが内部に蓄積されている可能性があるからです。その場合は、専門家に詳しく調査してもらうことが必要です。

増築をしているか、増築工事は適切なものか

平均すると、築後15年を過ぎた住宅では、多くの場合、増築が施されています。増築を行った際に、既存部分を適切な補修・改修したかどうか、また増築部分との接合がきちんとしているかどうかが、耐震性を判断するポイントになります。

建物が傷んでいる箇所はないか

建物全体を見渡し、傷んでいるところがないかどうかを見てみましょう。屋根の棟や軒先が波打っていたり、柱や床が傾いていたり、建具の立て付けが悪くなっていないでしょうか。どだいをつついてみて、ガサガサという音がしたら、腐っていたり、シロアリの被害にあっていることが考えられます。建物の北側や風呂場まわりは、念入りに調べてみることが必要です。

建物はどんな形をしているか

建物を上から見たとき、1階の平面はどのような形になるか、大まかに見てみましょう。長方形に近い平面の建物は、地震に強いと言われていますが、逆に、L字型やT字型の平面をした建物は比較的弱いと言われます。凹凸が多い形の場合は、91cm以下の凹凸や出窓やバルコニーは無視してかまいません。

吹き抜けがあるかどうか

外見に問題がない建物でも、内部に大きな吹き抜けがあると、地震が起こった際に、建物をゆがめてしまう可能性があります。あなたの家には、一辺が4m以上あるような大きな吹き抜けがあるでしょうか。

1階と2階の壁面は一致しているか

2階の壁面と1階の壁面が一致していれば、2階の地震力は1階壁にスムーズに流れてくれます。2階壁面の直下に1階壁面がない場合は、2階の地震力が床を介して1階壁に流れることになるので、床面に大きな負荷がかかり、床から壊れるおそれがあります。

壁の配置はバランスがとれているか

建物の中で、壁の配置がどこかに偏っていると、壁の多い部分は揺れが小さく、壁が少ない部分は揺れが大きくなります。地震の際には、揺れの大きな部分から先に壊れていく可能性があります。

屋根葺材は何か、壁は少なくないか

瓦は耐震性に優れた屋根葺材ですが、やや重いため、建物の側に、それに応じた耐力が必要になります。また、耐力の大きさは、壁の多さに比例します(壁が多いほど地震に強い)。

基礎は何か

鉄筋コンクリートによる布基礎・ベタ基礎・杭基礎のような堅牢な基礎であれば、地震にも比較的強いと言えます。

一般診断と精密診断

上記の「誰でもできるわが家の耐震診断」の結果、耐震性に不安があるという結果になったら、一般診断と精密診断の両方を受けることをお勧めします。

一般診断、精密診断は、大地震の揺れに見舞われた際に、その住宅が倒壊するかしないかということを上部構造評点(Iwという単位の評点をつけます)で判断するものです。
この二つの診断はセットで受けるもので、一般診断で問題ないという判定になった場合には、精密診断も受ける必要があります。
精密診断では、部位別に調査するために、内装材や外装材を剥がしたりします。このため、結果的に改修の必要がないという判定になった場合には、その費用は無駄になってしまいますので、先に一般診断を行うのがいいでしょう。
また、精密診断を受けずに改修を進めてしまうと、部位別の診断を省略してしまうことになりますので、必要以上の改修を行うことになることがあります。

一般診断・精密診断は、耐震診断は専門家に依頼する

一般診断や精密診断は、建築に関する高度な知識や経験が必要ですので、建築士など建築の専門家に依頼しなければなりません。
自治体によっては、信頼できる耐震診断事務所が登録されていますので、ホームページなどで調べてみるか、下記の団体に問い合わせましょう。

財団法人 日本建築防災協会
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

「自治体から委託を受けている」などと言って、自治体の耐震診断を装って突然訪問・点検し、根拠なく不安をあおり、高額な改修工事を勧める悪徳業者がいます。十分ご注意ください。
耐震診断にかかる費用は、建築当時の設計図があるかどうかといったことや、建物の形状、築年数などによって異なります。設計図があれば、概ね、10万円~20万円程度とされていますが、自治体の建設指導部などの耐震診断員が、安く、場合によっては無料で診断してくれたりすることもありますので、問い合わせてみましょう。費用の助成制度がある自治体もあります。

一例ですが、西宮市の場合では、木造戸建て住宅の耐震診断にかかる費用は、手数料3,090円、診断経費30,900円の合計33,990円です(2017年現在。また申し込みが必要です。詳しくはこちらをご覧ください)。

一般診断

耐震改修等が必要かどうかを判定するための診断です。壁の強さ、壁の配置、劣化度、柱と壁の接合部分等を目視などで検査します。
この結果によって改修を検討していくことになるもので、必ずしも改修することを前提とはしない診断です。
調査にあたっては、建物のすべての部位ではなく、代表的な部位で平均的な評価しますので、原則、内装材や外装材を剥がしたりしません。

精密診断

一般診断の結果、改修の必要性が高いと判定されたものについて、部材やそれらの接合部等をより詳細に調査し、改修を行うべきかどうかを最終的に判断するための診断です。
改修することになった場合は、補修設計を行い、改修を施すことになります。
改修後に再度、耐震性を診断します。

一般診断、精密診断でつけられる上部構造評点と判断の関係は次のようなものです。

上部構造評点 判定
1.5以上 倒壊しない
1.0以上~1.5未満 一応倒壊しない
0.7以上~1.0未満 倒壊する可能性がある
0.7未満 倒壊する可能性が高い