1−2,旧耐震基準VS新耐震基準:性能の違いを徹底解説

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2024/09/23

旧耐震基準(1981年以前)と新耐震基準(1981年以降)の違いは、地震に対する建物の安全性と設計思想に大きく影響しています。ここでは、それぞれの基準に基づく性能の違いを徹底解説します。

1. 目標と目的の違い

  • 旧耐震基準(1950年〜1981年)
    • 目的: 中規模程度の地震(震度5程度)で建物が損傷しないことを主な目標としています。地震に耐えることよりも、建物がある程度の強度を持ち、破壊されにくいという考え方が中心でした。
    • 限界: 大規模な地震(震度6以上)に対しては、倒壊や甚大な被害を免れることは難しく、強度や耐久性に限界がありました。
  • 新耐震基準(1981年以降)
    • 目的: 震度6〜7の大規模な地震でも建物が倒壊しないことを目的とし、地震時の人命保護を重視しています。たとえ損傷があっても建物が倒壊しないことで、住人が安全に避難できる時間を確保することが重視されています​

2. 設計思想の違い

  • 旧耐震基準
    • 地震時に建物が受ける「応力」(建物にかかる力)に基づいて設計されていました。地震の力に対抗するために強固な構造を求められましたが、揺れに対する柔軟な設計はあまり考慮されていませんでした。
  • 新耐震基準
    • 変形性能」が重視され、建物が地震時に揺れても倒壊しない設計が採用されています。つまり、建物が揺れに対して柔軟に変形して力を吸収し、耐えることができるようになっています。これにより、地震後も建物が大きな損壊を避け、倒壊の危険性を軽減することができます​3. 構造上の違い
  • 旧耐震基準
    • 主に「耐力壁」を重視した設計で、特定の壁や柱が建物の強度を担っていました。耐力壁が崩壊すると建物全体が崩れる可能性が高かったのです。また、接合部の強度や基礎構造の強さが現代ほど厳密に規定されておらず、全体的な強度には限界がありました。
  • 新耐震基準
    • 耐力壁だけでなく、建物全体がバランス良く揺れを吸収することを目指した設計がなされています。接合部の強化や、基礎構造の強化も重要視され、柱や梁、接合部における強度が旧基準よりも厳格に規定されています。また、耐震性能が高まるよう、建物全体の重量バランスや水平・垂直方向の安定性が重視されています​

4. 耐震性の向上

  • 旧耐震基準:
    • 中規模地震に対する耐震性能が十分でないため、震度5以上の地震では倒壊や甚大な被害を受けやすい構造です。特に、**阪神・淡路大震災(1995年)**で多くの旧耐震基準の建物が倒壊し、その脆弱性が広く認識されました。
  • 新耐震基準:
    • 新基準では、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大規模地震でも倒壊を免れた建物が多く、その有効性が実証されました。耐震補強がされている建物は、特に震度7の地震でも安全を保つことができました。これにより、現在ではこの基準に基づく建物は非常に高い耐震性能を有しているとされています5. 補強の必要性
  • 旧耐震基準の建物は、震度6〜7の大地震では倒壊のリスクが高いため、耐震補強が強く推奨されています。耐震診断を受けた上で、耐震補強工事を行うことで、新耐震基準に近い耐震性能を持たせることが可能です。
  • 新耐震基準に基づいて建てられた建物でも、さらに強化するために免震装置制震装置を取り付けることができます。これにより、地震の揺れをさらに軽減し、居住性や安全性を向上させることができますまとめ
  • 旧耐震基準: 主に中規模地震を対象とし、大規模地震に対しては倒壊のリスクが高い。設計の柔軟性や接合部の強度が不十分で、耐震補強が推奨される。
  • 新耐震基準: 大規模地震(震度6〜7)に耐える設計で、建物が倒壊しないように変形性能や接合部、基礎の強化が重視されている。

1981年以降に建てられた建物は、現代の厳格な耐震基準を満たしており、大地震にも耐えられる構造を持つため、安全性が大幅に向上しています。